「心」が変われば、「体」も劇的に変わる!
太学功では、人間は心と体はひとつであると考えます。
気功の3つの基本「三調節」のなかでも、心は人間にとってとても大切なものなので、「調心」を勧めています。心の持ち方ひとつで、気は増えもすれば、減りするのです。
(レッスンでも九正道を教えています)
心が心配、不平不満、怒り、悲しみなどで満たされていては、せっかく毎日気功を行なっても、気はどんどん流れ、体も元気とはほど遠い状態になります。
気の充実度の違いは、心の広さ、物事の受け止め方によく表れます。たとえば、人間関係でちょっとした行き違いがあったとき、気が充満している人は「私が、あのときしっかり確認しておけばよかった。次から気を付けよう」と反省したあと、すぐに気分転換できます。それに対し、気が足りない人は、いつまでも相手をうらんだり、落ち込んだりとぐずぐずと気持ちをそのことから離すことができません。
このように同じ経験をしても、エネルギーに満ちた人とエネルギーが少ない人とでは、受け止め方が違うのです。
心が素直になり、気に病むことが減るほどに気が入りやすい体になっていきます。
心のエネルギーが増える—-「九正道」
太学功の精神的な訓練は、道教の考えに基づいています。
中国の伝統宗教である道教は、古来の巫術(ふじゅつ)や老荘道家(ろうそうどうか)の流れをくみ、これに陰陽五行説(おんみょうごぎょうせつ)、神仙思想(しんせんしそう)を加えて、不老長寿の術を求めます。
また、太学功には仏教の教理もとり入れられており、心のあり方の基準として「九正道(きゅうしょうどう)」を学びます。
仏教には、人間が正しい生き方をするための八つの道を示す「八正道」があります。
これからご紹介する太学功の「九正道」は、仏教の「八正道」をさらに深めた、心の修養を積むための太学功独自の精神理論です。
少々難解に思えるかもしれませんが、太学功の大事な理論の一つなので、「心の器」を大きくするヒントにしてください。
「九正道」は次の九つから成ります。
① 正信(しょうしん) ②正見(しょうけん) ③正思惟(しょうしい) ④正語(しょうご) ⑤正業(しょうぎょう) ⑥正命(しょうみょう) ⑦正精進(しょうしょうじん) ⑧正念(しょうねん) ⑨正定(しょうじょう)
順に解説していきましょう。
① 正信 「中庸(ちゅうよう)」をつかむ
「正信」は「正しく信じる」ということです。
どのような物事も、まずは「受け容れる」ことが大切です。自分だけが正しいと、はじめから相手を拒絶するのではなく、まずは「ありのまま」の姿をとらえてみるのです。もちろん、妄信的に信じてもよくありません。
「拒絶」でも「妄信」でもない「中庸」をつかむことが大切です。
例えば人の話を聞くときにも、まずは相手の話を虚心坦懐に聞くこと。
自分の欠点を指摘されても、一度受け容れ、反省してみる。「自分は絶対にそんなことはない」と聞く耳を持たずにいたら、自分を改善することはできません。
耳の痛い言葉も、いったんは素直に受け容れて自省する。そのうえで、やはり相手の指摘は的外れと思ったなら、自分の考えを信頼すればいいのです。
まずは、受け容れ、疑問があれば追究する。それが九正道のうちの「正信」です。
② 正見 自己中心にならない
「正見」は、「正しく見る」、つまりものの考え方、見解が自己中心的にならないようにしましょう、という教えです。
ものの見方や考え方、価値観は一人ひとり違います。正しく見るというのは、自分の考え、理屈、価値観だけが正しいと思うのではなく、自分とは異なった考え、価値観も謙虚になって認めるということです。
たとえば、幼い子供にも知恵があり、本質をついた鋭い指摘をして大事なことを教えてくれることがあります。それを「子供の言うことだから」とないがしろにしないことで、大人も視野を広げられます。
相手と意見の相違があるときも、どちらが正しい、間違っているなどと即断せず、一度保留にし、よく考えてみることが大切です。
③ 正思惟 真理に照らして考える
「正思惟」は「正しくものを考える」、つまり、自分本位にならず、真理に照らして考えるということです。
私たちはつい、自分の知識や経験、意見、考えばかりにこだわってしまうものです。そして、その考え方や意見は、自分だけに都合がよいような、狭量なものであったりします。そして、自分の思い通りにならないと怒ったりイライラしたりして、不平不満を口にします。これが仏教において最も克服すべきとされる煩悩である三毒(貪(とん)、瞋(じん)、痴(ち))です。
自分の価値観に執着せずに、誠実に柔和に考えていけば、清浄な心を得ることができます。執着の先に進歩はありません。
④ 正語 「正しい言葉・きれいな言葉」で話す
「正語」は、正しく信じ、正しく見、正しく考えることによってできた自分の考えや意見を、「正しい言葉」で発言するということです。
人間の言葉の中には、たくさんの気が入っています。たとえば花に「美しく咲いてね」と話しかけると、本当にきれいに咲いてくれます。また、陰口なども、その言葉の波動は相手に伝わっているのです。ですから、人を貶めるような悪い言葉は、絶対に使わないよう強い意識を持たなくてはなりません。
さらに、正語を心がけていれば、いい加減な世論や一時の感情的な意見に惑わされることはなくなります。今はインターネットでも、無数の言葉が世の中を飛び交っていますが、正語を心がければ、自分の意思を自分でしっかりコントロールできるようになるのです。
本を読むときも、その本の内容を100%鵜呑みにするのはよくありません。それは著者がその本を書いたときのものの考え方であり、不変のものではありません。
孔子が編纂したとされる儒教の『尚書』(四書五経の一つ)にも「経典をすべて信じるのであれば、経典などないほうがよい」という言葉があります。
⑤ 正業 行いを正し、人の道を外れない
「正業」は、「正しく行動する」ということです。
行動は、言葉以上に大きな影響を相手に与えるので、より真剣に実践しなければなりません。常に自分の「身の丈」を考えてふるまうのはもちろん、できる限り「人の役に立つ行い」を心がけてください。
正しい行為、善行には、それに見合った成果がついてきます。
よからぬことに誘惑されないよう、自分の意識を清浄な状態にしておくことが大切です。自分の行いは、すべて自分にかえってくるのが世の習いですから、心を律して正しい行いを心がけることです。
⑥ 正命 「宿命」を受け容れ、「運命」を切り拓く
「正命」は「命」という意味ですが、それだけではありません。太学功では、この命を「宿命」と「運命」に分けています。
人間の命は、「宿命」と「運命」が重なり合ってできています。誰でも「宿命」と「運命」の両方を持っているのです。
宿命は、変えられないものです。たとえば、性別や誰の子供として生まれてきたかなどは、自分の力では変えられません。
これに対し運命は、命を運ぶとあるように、本人の心がけと努力次第で、いかようにも変えていけるのです。何を学ぶか、誰と付き合うか、体のためになることを実践するか、こうしたことはすべて自分の意志で決められることであり、人生を形作っていく大切な要素です。
人生で悩み事にぶつかったとき、進路に迷った時などに、占いを活用する人もいるかもしれませんが、占いでわかるのはせいぜい宿命だけです。
未来は自分の努力によって、よい方向に変えていくことができます。
変えられない宿命を受け容れ、変えられる運命を精一杯の努力で充実したものにしていく。これが、太学功でいう「正命」なのです。太学功では宿命も大事ですが、変えられる運命のほうがもっと大事だと考えています。
⑦ 正精進 正しい方法で努力する
「正精進」は、「正しい方法をもって努力する、精進する」ということです。
精進する場合に大切なのは、「方法」です。自分では一生懸命努力しているつもりでも、方法が間違っていれば、結果的には精進にならないのです。
正しい努力をしているとき、人は心が澄みわたり、邪念がわいてくることはありません。
⑧ 正念 精神を込めて強く願う
「正念」は、「念ずる力、強く思うこと」です。
「正念」は③の「正思惟」とは違います。正思惟はただ考えるだけですが、正念はただ思うだけではなく、一歩進んで深く望んだり考えたりすることですから、力が入ります。このように精神を込めた力を「念力」というのです。
念の使い方にも、いい使い方と悪い使い方があります。正しく使うとよい方向に作用しますが、よくないことに使えば反動があります。
ですから、常に自分の意識のあり方を省み、どうあるべきかを考え、清廉な心で正しい念を使うことです。「こうなると、皆にとって、よい結果になる」といった明るい未来をイメージし、よい気を出しながら念じることが大切です。
修行をして、高いレベルで他人の幸せのために念を使うと、自然に自分も幸せになるのです。
⑨ 正定 一つのとらわれもない、自由自在の極致
「正定」の「定」は、自然な状態のことを言います。これは、心を動かさずに固定するという意味ではありません。
私たちの心は、恐怖や不安、焦り、誘惑に乱されてしまいがちですが、そうしたことに心を惑わされなくなったとき、心は静かに定まり、本当の意味で自由自在に動くことができる。そういう状態が「正定」です。
「水は方円の器にしたがう」といいます。水には形がないから、何に入れてもその形になるのです。葦が柔らかくてよくしなることも、「正定」を理解するヒントとなるでしょう。
以上が太学功の「九正道」です。
後半になるにしたがって、難しくなってくるのを感じたことでしょう。終わりの二つ、「正念」と「正定」は正しい修行、つまり、「正精進」ができてこそ真の理解に至るものです。特に最後の「定」になるとは、神に近くなるということですから、本当の修行を積まない限りできるものではありません。
それでも「九正道」の中から、一つでも二つでも、あなたの日常のヒントとなる言葉を見つけられたのではないでしょうか。
それをときどき思い出し、心を正しく、大きくするよう努めてみてください。心が大きくなるに従い、気の器も大きくなっていくはずです。
1日5分の「心のトレーニング」で強くなる
人間は、全くストレスのない状態よりも、適度なストレスがあったほうが、体も脳も活性化するとも言われます。たとえば、人前に出て発言すると緊張しますし、ストレスを感じることもありますが、そうした経験を避けていては学びも成長もありません。家に引きこもって誰とも会わないようにすれば、人づき合いのストレスとは無縁でいられますが、それでは味気なく、つまらない人生になってしまいます。
ストレスの原因をなくそうとするより、ストレスをストレスと感じない考え方を身につけるほうがずっと大切です。あらゆる経験、出来事、人間関係を自分の成長に生かそうという発想の転換こそ、心を強くします。
ストレスを感じやすい人の思考傾向
ストレスを感じやすい人の特徴をあげてみましょう。
・問題から逃げようとする
・「他人のせい」にしようとする
・自分を省みる時間が少ない
・「過ぎてしまったこと」にこだわる
心当たりはありませんか?
ストレスのさなかにいると、どうしても視野が狭くなりがちですが、こんなときこそ、「九正道」を思い出してください。「人や環境さえ変わってくれれば、、、」と考えるのではなく、自分の考え方を変えてみましょう。
「あの人」「あのこと」がストレスの原因と思っているうちは、付き合う人を変えても、環境を変えても、新しいストレスの種が出てくるだけです。まずは、自分を変えること。それが心を強くする第一歩です。
また、自分を見つめる内省の時間を一日5分でも作ってみてください。自分を見つめれば、他人の心の深い部分も想像できるようになります。
うつ、引きこもりを解決する気功法
最近、うつや引きこもりの人が非常に増えています。これらもストレスが原因でかかる病気の一つといわれています。
太学功では、うつや引きこもりも、ストレスなどにより、気をたくさん使ってしまったため、気が極端に不足し、エネルギー不足が慢性化したことによってになってしまうと考えます。気が極端に少ないと思考はコントロールできません。よくうつ状態の人に、「なぜそんなふうに考えるの? こうしなよ」などと原因や対策を押し付けるのはよくないといいます。本人もわかっていることを指摘しても、さらなるストレスになり、ますます気が減るだけです。正しい思考ができないくらい気が減っている人は、減った気を補充するため、気功師に気を入れてもらうことをお勧めします。体に気が満ちてくれば、心の荷物は自然と軽くなっていきます。
太学功の教室にもストレスが原因で、うつ、自律神経失調症、円形脱毛症、胃潰瘍などを患ったのをきっかけにして、気功をはじめた人は少なくありません。
皆「これほど悩んでしまうのは、気が不足しているからだ」という考え方を理解し、気功の練習を重ねたことで気が充実し、驚くほど回復して、元気に日常生活を送れるようになっています。
ストレスに特によく効く気功法として「松静功」があります。気を充実させつつ、自分と向き合うと、今までにない思考で自分について考えることができます。
少しずつ気が満ち、自分の心とうまく向き合うことができるようになると、不安感も知らないうちになくなっているでしょう。
たった3分で不安感・緊張感が消えていく
ストレスを感じたら、その場ですぐにできる気功をご紹介しましょう。
「のぼせる」という言葉があるように、緊張するのは気が体の上のほうに集まってしまうためです。そういうときは、ゆっくりと呼吸し、下丹田を意識するだけでも落ち着きます。そして、次の気功を行なって、緊張をほぐしてみてください。
緊張をほぐす気功
① 両腕を自然な状態にして立ち、肩の力を抜いて、人差し指と親指でO(オー)リングをつくります。
② 肩と胸の力をぬき、逆腹式呼吸を深くゆっくり3回行います。
※気が下丹田にたまっていくようイメージします。
これは心を落ち着かせるための気功法なので、ここぞという大事な話をするときや重要な交渉、面接試験、筆記試験の前など、さまざまな場面で実践すると、本来の実力が発揮できます。
次に、この人の前だとなぜか緊張してしまう、どうも弱気になってしまう、、、といったときにも有効な気功法を紹介します。
苦手な人の前でも自然体でいられる気功法
① 全身の力を抜き、下丹田の前で、手を軽く重ね合わせます。男性は左が下、右手が上に、女性はは右手が下、左手が上になるように、両手を重ねます。上になる手の親指を、下になるほうの手のひらの下に潜り込ませます。
② 上になっている手の親指の腹で、下になっている手のひらの中央を押しながら、逆腹式呼吸を深く3回行います。
人ごみに出ると気分が悪くなりやすい人は、以上の動作に加えて、肺をなるべく開くようにイメージし、ゆっくり呼吸してみてください。下丹田のエネルギーがしっかりして、人ごみに酔いにくくなります。
脳の酷使は老化を早める?!
オフィスで一日中仕事をしていたり、何時間も勉強机に向かっていたりすると、「今日は体を使わなかったから、エネルギーを使わなかったな。」と思うかもしれません。
しかし実際は、脳は体の中で、最も多くのエネルギーを消費する器官なので、頭を使えば気も使っています。
体力に限界があるように、脳にも限界があります。だらだらと長時間やってもただ気を無駄に使っているだけ。
仕事も勉強も、やるときは集中してやり、休むときはきちんと休むことが大切です。
「人間の脳は、ほんの数%しか使われていない。脳は使えば使うほど発達するから、トレーニングが有効」といった説もあるようですが、太学功の観点からは、必要のない時に脳を使うのは、エネルギーの浪費にすぎません。
脳は必要なときに必要なだけ使い、あとはむしろ休ませ、エネルギーを充実させておくべきです。そのほうが脳の働きは活性化します。
修行僧の生活を考えてみてください。昔から、長生きで、年をとっても頭がしっかりしている聡明な人がたくさんいます。
彼らは修行や瞑想を中心とした生活を送り、一般の人々のように、脳を酷使するような生活はしません。それでも奥深い知恵を持ち、豊かな心で人生を送っています。歴史をひもとけば、はかりしれない英知に満ちた経典も、彼らによってたくさん残されています。
もっとも、多くの現代人は、修行僧と同じような生活を送ることはできません。それでも、必要以上に酷使すれば、脳に疲れがたまり、老化も早く進むことはぜひ心にとどめておきましょう。
朝時間は脳の「ゴールデンタイム」
能力を高めるためには、朝の過ごし方が肝心です。
夜は早めに寝て、いい睡眠をしっかりとり、朝は早めに起きること。
気功や軽い運動で体を整えてから、朝食前に、必要に応じて仕事や勉強や読書など、頭を使うとよいでしょう。朝のこの時間は、頭が最も冴えわたっているので、仕事や勉強にしっかり集中でき、夜に比べてずっと効率が上がります。
果物など、何か甘いものを少し食べて血糖値をあげると、脳はスムーズに働きはじめます。そのあとで本格的に朝食をとり、一日の活動をはじめてください。これでその日一日、仕事や勉強のはかどり方、頭の働き方が違うはずです。
「朝は頭がぼうっとしてしまい、全然働きません」という人は、疲れをためすぎているか、夜の間にきちんと体が修復されていないのです。生活習慣を見直し、徐々に体を整えていってください。
「夜の2時間」より「朝の30分」!
皆さんの中でも、夜、疲れ切っているのに、だらだらと仕事や勉強をする方は多いと思いますが、これはやめたほうが良い習慣です。疲れ切った脳は新たな知識を吸収することも、新しいアイデアを生み出すこともできません。時間を長くかけたからといって、成果が上がるわけではないのです。
朝の2時間と夜の2時間ではその質は全く違います。疲れ切った体で夜に2時間の残業や勉強をするくらいなら、早く切り上げて、翌朝30分早く起きて、仕事や勉強をしたほうが効率的で良い成果を得ることができるでしょう。