「医者いらず」の呼吸法
気はどこから入るの?
「自然治癒力」を高め、「病気にならない体」になるためには、体に気を充満させることです。体は「気」の充電池のようなもので、気功によって気をたっぷりと入れ、出ていく気を少なくするように、省エネを心がければ、体はいつもエネルギーが満ちている状態になります。疲れにくく、いつまでも若々しく、元気に長生きできます。
気が入ってくるルートは2つ
私たちの体が気をとり入れるルートは大きく分けて2つあります。一つが「環境」、もう一つは「呼吸」と「食事」です。
環境からは、自分を取りまく環境から直接体内に気を得ています。
食事と呼吸を一つにまとめるのは、食べ物も空気も、いったん体内に取り込んだ後、内臓を経て、気を得ているからです。
一つ目のルートである「環境」から取り入れる気は、自然界などの外界から直接体に入ります。
太学功では、環境から得る気を、呼吸・食事から得られる気よりも重視しています。大地がなければ、私たちは立っていられないように、環境は私たちが生きるために最も影響を受け、気をたくさん得ているのです。
よく仙人の話がでると、「霞を食べている」なんていいますね。相当な修行を積んだ人であれば、環境から自在に気をとり入れることができ、食事さえいらなくなります。
環境とは、太陽、月、大地、植物など、私たちを取り囲んでいるすべてであり、そこからさまざまな気を得ています。わかりやすいのは、森林浴でしょうか。大自然の中にいると山や木、陽射しなど、周囲から気を吸収しているのを実感できると思います。
これと同じように、家庭や職場、学校など、日常生活を送っている空間からも私たちはたえずエネルギーを吸収しています。
ですから、常に「いい気の場」にいることを心がけてください。家の中でも、不要なものをため込んでゴチャゴチャしていれば、それだけで気がよどみます。
二つ目のルートは、「呼吸」と「食事」です。食事から気を得るというのは分かりやすいと思いますが、呼吸から気を得るという感覚はないかもしれません。
太学功では呼吸を食事よりも大切なものと考えます。
例えば、水さえあれば、一週間くらい何も食べなくてもなんとか生きていけますが、呼吸は、5分止めることさえ難しいでしょう。それだけ私たちは呼吸から、大量の気を得ているのです。
「気」の浪費は寿命を縮める
このように取り入れた気は、使えばすぐになくなってしまいます。私たちは知らず知らずに気を無駄遣いしているのです。
例えば、体を鍛えようと、激しいスポーツをして、疲れ切ってしまうことがありますね。これも気の無駄遣いをしているといえます。筋肉を使いすぎるだけでなく、スポーツを楽しんでいるその気持ち、ポジティブな心の動きにも気は使われています。
また、親しい友人たちとひとしきりおしゃべりをした後、一人で静かな時間を過ごしたくなることがあります。これも、使われた気を回復しようと体が自然に調整しているからなのです。
気は何をやっていても、消費されるものなので、省エネで使うのはとても大事です。人間も充電池のようなものですから、気の消費が少ないうちは、短時間で充電できますが、全部使いきってから充電しようとすると相当な時間がかかります。エネルギーが切れる前に、ふだんから気を充実させておく、毎日の充電法が、「気功」です。
日ごろから、気を消費しないように、病気を寄せつけないように、「気が減ってからではなく、減る前にためておく」のを心がけてください。
40歳は初老?!
今は皆さんお若く、40代でも、まだまだいろいろなことができるように見えますね。ただ過信しているうちに年はとってゆくもの。40歳の異称は「初老」、やはり老化が始まっているのです。
若い時にはあまり差はなくても、40代、50代、60代と歳を重ねていくうちに気を浪費してきた人と効率よく使って生きてきた人とでは、気力や体力、健康状態に大きな開きが出てきます。
自分の体調を知ることで、調子の悪いときも、気が沈んでいるときも、気功で乗り切れるようになると自分に自信がつきます。
太学功の教室に通われている方々からは、次のようなお話をよく聞きます。
「頭痛やめまいが起きると、以前は不安や不快に感じて、すぐに薬に頼っていましたが、今は気功や呼吸法で克服できるようになりました。」
「イライラしたり、気持ちが沈んだりした時に、気功を行うことで落ち着けるようになりました。」
太学功の教室では気功を通じて自分の体と仲良くできる人が増え、皆さん元気になっています。
未病のうちに解決するのが健康な人の常識
太学功には奥深い理論がたくさんありますが、その目指すところを一言でいえば、「宇宙や自然のエネルギー(気)を自分の体内にとり込み、自分の中にある能力を活かしきる」ということです。
自分の気が充実してくれば、どんな環境にいても、その場の気を取りれるパワースポットにその場を変えられるようになります。
気功は究極の予防医学です。
毎日5分でよいので気功を続けていれば、どんな方も変わってきます。体の内側からエネルギーがあふれ、心は穏やかですっきりし、頭は冴えてきます。体が疲れたら、すぐに気づき、いたわるようになります。これが病気にならない生き方です。
体調がよくなれば、自然と穏やかになりますし、人間関係、仕事や日々の生活そのものも確実に変化していくことでしょう。
「健康」と「元気」の違い
健康とは、あくまで「病気でない」こと。いま病気でないとすれば、とりあえず健康であるといえますね。
しかし太学功は単なる健康よりも一段上の「元気」を目指します。エネルギーに満ちあふれ、疲れを感じずに、活動的に一日を過ごせる状態です。
太学功を続ければ、病気にならない体になれるだけでなく、自分の能力を活かしきることができる元気な体になれます。
見た目も若々しくなりますので、「昔と全然変わらない」「いつでもステキ」と称賛の声を聞くことが増えるため、生活にハリがでて、社交的になります。仕事は時間ではなくエネルギーで勝負するようになりますから、たとえいくつになっても、若い人に負けることはありません。
3つの「イメージする」ポイント
仕事や家事、家族の世話などに追われる忙しい毎日の中で、私たちは自分の内側に意識を向けることを忘れがちになります。
気功をすることで自然に自分の体と対話することが習慣になります。自分の体に気をむけると、体調不良や疲れといった「未病」の段階で気づけるようになるのです。
気功は自分の体と対話する方法でもあり、気功をするときには、次の3つをイメージしてみてください。
① 「治したい、癒したい、気になる」ところ
気功で病気を治すには、治したい、癒したい、気になるところを重点的に意識することがもっとも大切です。
たとえば、椎間板ヘルニアの方は痛みのあるところに、ガンを治療中の方は、ガン細胞にイメージを集中させるのです。乳ガンと診断されたある30代の女性は、数か月間毎日、乳房のガン細胞が正常に戻る様子をイメージしながら気功を行い、気功療法の施術も受けた結果、その後の病院検査でガン細胞は石灰化していたことがわかりました。
このように、具体的な体の一部をイメージすると、そこに「気」が集まり、不調を修復しようとするパワーが高まるのです。
② 体のエネルギー・スポット「丹田」
気功では「気=エネルギー」は「丹田」に集まるとされています。
丹田は、「丹をつくる田んぼ」という意味です。「丹」とは、昔の中国で、不老不死の丸薬と考えられていたもの。人間の体の「丹田」も、それにたとえられるくらい強いエネルギーをためられる場所として、この名前がつけられたのでしょう。
丹田は全身に3か所あります。
「下丹田」 おへその下の、女性なら子宮のあたり(へその下三寸)。
「中丹田」 胸骨の後ろ側にある、胸腺のあたり
「上丹田」 眉間の奥にある、脳の松果体のあたり
3つの中でも一番大事なのは「下丹田」です。「下丹田」は命の源泉のようなもので、ここにエネルギーをためることで、私たちは体も心も元気になっていくのです。
③ 「心と体」を一つにする
心と体が一つになると、私たちはリラックスして元気でいられます。しかし、自分を省みる時間が無くなると、心と体は次第に離れていきます。バラバラな状態で気功をすると、心と体のずれを調整するために気を消耗し、あまりよい効果を得られません。
ですから、気功をするときには、心と体を一つにするイメージを持ってください。心の動きと体の動きが完全に一致しているとき、究極の省エネ状態になり、最も効率よく気を吸収できます。
まず心を静かに落ち着け、自分の意識を自分の体に向けていきます。そうすると、それまで浮わついていた心がスーッと自分の体に戻ってくる感覚が得られます。それに慣れたら、次に、地球と自分(心と体)、あるいは環境、自然、大地と自分が一体化しているイメージを描いてみましょう。これにより地球(環境、自然、大地)のエネルギーがスムーズに体内に入るようになります。
「三調節」とは
気功では、「呼吸」「体」「心」の3つを整えること基本としています。これを「調息」「調身」「調心」と呼び、三つを「三調節」と呼びます。
これらすべての目的は、「エネルギーが入りやすい体をつくること」です。
「調息」 “少呼吸”で肺の負担を減らす
調息は「肺からエネルギーをより多く吸収できる体」をつくるために行います。呼吸は、気をとり入れる2つのルート「環境」「呼吸と食事」のうちの一つで、食事よりも大切なものです。ですから、肺が常に余裕をもって働いていることが病気を防ぐためには重要です。
そのために太学功では、できるだけ少呼吸(ゆっくり呼吸することで呼吸の回数を減らし、かつ空気の量も必要な分を効率的に取り入れことができる呼吸法)を勧めています。
「調身」 「気」と「血液」のめぐりをよくする
調身は、姿勢を正すことで、エネルギーを効率よくたくさんとりこめる体をつくるために行います。体のゆがみがなくなれば、気と血液の流れもスムーズになります。肩と腰の力を抜いて、下丹田に気を集め、力が入らないようにします。
正しい姿勢を保つことによって、血流がよくなり、体中の気と血液の流れがスムーズになることで、全身の巡りがよくなります。
「調心」 自然体でリラックスした心を保つ
調心は、心(気持ち)を安定させ、「自律神経」を整え、気をたくさんとりこめる体にします。いつもリラックスした心(気持ち)で、気を無駄遣いしないことを目指します。
人が生きるうえで、「心」が一番エネルギーを使っています。そして、三調節のなかで、この「調心」が一番難しいといえるでしょう。
自律神経が乱れると、動機やめまい、憂うつ感など、心因性の不快な症状が表れることがあります。自律神経が乱れる要因には様々なものが考えられますが、ストレスや心理的な問題から起こることも多いと言われています。このように、不安や心配、怒りや妬みといったネガティブな感情は、心だけでなく、体にも影響し、気を消耗しているのです。
雑念やネガティブな感情を抱え込まないようにするのが調心であり、うまく調心ができれば、ストレス社会といわれる現代でもストレスをためずにすむようになります。
病気にならない体づくりの第一歩
呼吸法に一番かかわる「調息」についてくわしく見ていくことにしましょう。
前述したように太学功では「少呼吸」を勧めています。ふだんの呼吸は、基本的に鼻呼吸を行います。口は閉じ、鼻で、できるだけ細く、長く、ゆったりと、呼吸します。
さらに、効果を高めるために、「逆腹式呼吸」を行います。
「逆腹式呼吸」とは、名前のとおり腹式呼吸の逆で、息を吸うときにおなかをへこませ、吐くときにふくらませる呼吸法です。
この呼吸法は単独で行なってもさまざまな効果を得ることができますし、気功法をしながら行うことにも、ぜひチャレンジしてみてください。
《逆腹式呼吸》
① お腹をへこませながら、ゆっくりと息を吸い、5秒ほど息を止めます。
② お腹をふくらませながら、ゆっくりと息を吐き出します。
※できるだけ細く長くゆったりと繰り返してください。
息を吸うときにおなかをへこませると横隔膜が上がり、肺が圧迫されて狭くなるので、吸収できる空気の量が少なくなります。これが、とり入れたわずかな空気の中から、必要な酸素を効率よく吸収する練習になるのです。
一般的には、肺活量を上げて、たくさんの空気を吸ってたくさん吐くほうがいいと思われていますが、これは肺に過度な活動をさせてしまうことにもつながります。この「逆腹式呼吸」(少呼吸)のほうが気を浪費せず、肺にもやさしいのです。
逆腹式呼吸をマスターすると、肌の新陳代謝が活発化し、エネルギーを皮ふからも取りこめるようになり、美しく強い肌に生まれ変わります。
少呼吸が習慣になると、疲れにくくなり、病気にかかりにくくなります。喘息など呼吸器系が弱い人から、「逆腹式呼吸を続けていたら症状が改善された」という話もたびたび聞きます。ほかにも、効率のいい呼吸が習慣になると、便秘や冷え症の改善といった効果もあらわれます。
つまり、「調息」をすると、自然に「調身」もできてくるのです。
1日5分の逆腹式呼吸で「太らない体質」に
逆腹式呼吸には、肥満防止効果もあります。食べすぎと肥満は気を浪費する最も避けたい習慣です。そこで、「最近、ちょっと太ってきた」「つい食べすぎてしまう」という人に効果的な呼吸法を紹介します。
《食べ過ぎ、肥満を予防する呼吸法》
① イスに座り、右手を下丹田、左手を胸の上にそっとおきます。
② 逆腹式呼吸で息を吸う、吐くの繰り返しをゆっくり18回、または36回、行います。
この「食べ過ぎ、肥満を予防する呼吸法」は、下腹から胸に気が通り、内臓にしみわたっていくようなイメージを描きながら行ってください。
この呼吸は腹筋の運動にもなり、お腹の脂肪が燃焼しやすくなります。さらに、胃腸の働きがよくなるので、食べ物の消化吸収がよくなり、空腹を感じにくくなります。これを食前の習慣にすれば、過食気味だった人は食欲が抑えられ、食欲不振だった人は美味しく食事ができるようになります。
呼吸を整えれば、心も整う
日常的に呼吸を整えることで、自然と心も落ち着き、整ってきます。ふだんから気功で体と心を鍛えていると、ちょっとやそっとのことでは動じなくなります。ただそれでも人間ですから、どうしても心が乱れてしまうこともあるでしょう。また雑念を捨てればいいとわかっていても、それが難しいから心がつらいわけです。
そういう時は「調息」というアプローチから「調心」してみてください。
自律神経失調症やアトピー、胃潰瘍、うつといった病気は心因性の原因に深く関係があるといわれています。すこしでも心が軽くなれば、症状もよくなるのです。ここで心理的なストレスを和らげるための呼吸法を紹介します。
呼吸に意識を集中することで、それまで「問題」ばかりに気を囚われていた心に変化が生まれるのを実感できることでしょう。
《ストレスを和らげる呼吸法》
① ゆっくりと目を閉じ、下丹田に両手をおきます。
② 逆腹式呼吸を9回行います。
③ 自分自身に語りかけ、今の気持ちを聞いてみます。
「家族のことが心配だったのね」
「仕事のプレッシャーがあるんだ」
「あの人に言われたことがショックだったんだね」
ていねいに呼吸を繰り返しながら、自分の気持ちを客観的に眺めると、だんだんと心も落ち着いてくるのが感じられるはずです。
また、怒りやイライラを鎮めたいときは、次の方法を試してみてください。怒りっぽい人は、血圧が高めで、心臓や脳の病気にかかりやすいといわれています。「カッ」と頭に血がのぼったときに、呼吸法で感情をコントロールできれば、心臓や脳の病気が発症するリスクも軽減されます。
《怒りを鎮める呼吸法》
① 目を閉じて、逆腹式呼吸を行いながら、頭から下に向かって気が下りていくようなイメージをします。
② 息を吐くときに、手のひらを下にして両手を頭にかざしながら、体にそわせるようにしてゆっくり下に動かしていき、手を下していきます。そして、気が頭から足先まで流れるようにイメージします。